X-RAY BACKSCATTER SPECTRAL IMAGING
片側からX線を当てるだけで、隠れた物の「形」と「材料」を見る
CdTe フォトンカウンティング・イメージセンサによる散乱X線スペクトル計測
株式会社 ANSeeN
対象の裏側にセンサを回り込ませられない場面でも撮像できる
X線透過(レントゲン)
X線後方散乱
従来の後方散乱は強度(明るさ)だけを使うため、分かるのは物体の形まで
従来の後方散乱
強度のみ → 形状
ANSeeN(散乱X線スペクトルイメージング)
強度+エネルギー → 形状+材料
X線光子を1個ずつ数え、そのエネルギーも記録するCdTe フォトンカウンティング・イメージセンサで散乱X線を受ける
材料弁別に使う3つの情報
強度
散乱X線の量(カウント数)
エネルギー
スペクトルの形。主成分分析で特徴を保ったまま1つの指標に圧縮する
散乱角
角度によって線量とスペクトルが変わる。多角度の同時取得が理想
3つを指標にCNN(深層学習)で材料を弁別するアルゴリズムを開発した
散乱X線は入射に比べてごくわずか。広い面積で漏れなく受け、かつ入射角度を制限して解像度を出す

シリコン基板にセンサモジュールをタイリングした
12×12cm 受線センサパネル(試作)
大面積化:小さなモジュールを並べる
CdTe検出素子とフォトンカウンティングLSIを積層した約1cm角のモジュールを、シリコン基板上にタイリング。ガラスエポキシ・セラミック・シリコンの3種を比べ、反りと配線精度を両立したのはシリコン基板だけだった
解像度:コリメータで入射角度を制限する
X線が当たった領域全体が光源のように振る舞うため、センサだけでは画像が大きくぼける(測定時間を延ばしても改善しない)。微細コリメータで入射角度を制限し、1cm以下の散乱線解像度を得た
小型の線源で撮れる
60keV以上のエネルギーを使うことで土壌の厚み・種類の影響を抑え、加速器級ではなく160〜300kV程度の工業用X線源で撮像できる
同じ対象を、土なし・土50mm越し・土で上下を挟んだ状態で撮像した

撮像系

土なし
背景との差分

表側に土50mm
土だけの画像との差分

土 表50mm・裏50mm
土だけの画像との差分
160kV, 3mA, 2秒積算
アルミ板越しにヒビの入ったコンクリートを撮像。手前の層と奥の層を撮り分けた

対象のコンクリート(ヒビあり)
層構成(線源側から)
アルミ板 5mm
空気 10mm
対象コンクリート 20mm
背面コンクリート 33mm

手前に焦点:アルミ板が強調される

奥に焦点:コンクリートが強調される
160kV, 3mA, 2秒積算
単元素の材料棒(炭素・アルミニウム・マグネシウム・チタン・ニッケル・鉄)を並べ、エネルギー帯を区切って画像化した

撮像した材料棒(スキャン画像と左右をそろえて表示)

形はどの帯でも見える
強度だけでも、何を撮ったかが形状から分かる解像度が得られている明るさの差は帯で変わる
低いエネルギー帯ほど、炭素など軽い元素は明るく、鉄・ニッケルなど重い元素は暗く写る。帯ごとの明るさの比が材料弁別の手がかりになる似た材料も見分ける
プラスチックとアクリル、土と石の組み合わせで弁別を確認。強度だけでは分けにくい土と石も、エネルギーを加えると分離できた研究開始時に設定した4つの目標に対する到達点
| 項目 | 目標 | 結果 | |
|---|---|---|---|
| 有効探査範囲 | 地表から最深10cm程度 | 深さ5cm:検出サイズ・解像度・材料弁別をすべて満たした 深さ10cm:材料による散乱X線の違いは確認。解像度は未達 | 5cmで達成 |
| 検出サイズ | 5cm角または直径5cm | 12×12cm の検出器を試作し、5cm以上の撮像領域を得た | 達成 |
| 散乱線解像度 | 1cm以内 | コリメータで入射角度を制限し、1cm板を明瞭に画像化した | 達成 |
| 材料弁別 | 金属・非金属の別と、それぞれ2種類以上 | 金属・非金属それぞれで2種類以上の材料を弁別した | 達成 |
高感度なセンサとアルゴリズムにより、線源のエネルギーを下げられる
従来の後方散乱システム
900kV
加速器線源
電源・重量のため大型車両が必須
開発したシステム
160kV
工業用X線源
可搬。ロボットアームでの駆動、バッテリー駆動の可能性も
想定する用途
検知できる深さは放射線のエネルギーで決まる
ガンマ線・中性子との併用(構想)
| 線種 | 深さ | 得られる情報 |
|---|---|---|
| X線(現状) | 5cm 10cm | 形状+材料弁別 形状 |
| ガンマ線 | 〜100cm | 形状+材料弁別 |
| 中性子 | 〜100cm | 軽元素材料の識別 |
ガンマ線源の例:137Cs(662keV)、60Co(1.2MeV)
2次元コリメータによる深度スキャン
タングステン等の3Dプリンティングで2次元コリメータを作り、深さを絞ったイメージングを高速・高精細に行う
300kV程度までの線源なら、3Dプリンタで出力できる厚みでコリメーション効果が得られる
本資料の成果は、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度(令和3〜5年度)の研究「フォトンカウンティングによるX線スペクトル分析を活用した散乱線画像計測技術の研究」によるもの。研究機関:東北マイクロテック/協力機関:TMS、BEAMX