CdTeFPD
検出方法:間接変換型と直接変換型
下図の左はX線で発光するシンチレーターと呼ばれる物質で光に変換し、それをCMOSカメラで受光する間接変換型です。光に変換する際に方向は制御できず拡散します。これが画像の滲み(ボケ)の原因となります。解決方法としては、シンチレーターを薄くすることで拡散を減らす、ピクセル毎に隔壁を設けて反射させる方法などがあります。どちらの方法も検出効率が劣化します。
下図の右は、X線と物質の相互作用によって発生する電子を信号として処理する直接変換型です。素子に厚みがあってもバイアス電圧が印可されており、拡散が最小限に抑えられます。検出効率を犠牲にせず、高コントラストな画像を得ることができます。

測定方法:蓄積方式とフォトンカウンティング方式
検出器(カメラ)から得られた信号を処理する方法は大きく分けて2つあります。1つは蓄積方式で、ある一定時間で得られた信号を累積します。このとき、カメラのノイズも累積してしまうため、線量が少ない状態ではノイズが目立つ結果になりやくなります。
もう一方はフォトンカウンティング方式で、光の最小単位であるフォトン(光子)を1粒1粒数えます。このため、線量が少ない状態でもノイズレスの画像を得ることができます。
測定方法:エネルギー弁別型フォトンカウンティング
フォトンカウンティング方式は、単純にフォトン数を得る方法ですが、本来、フォトンが持つエネルギー情報(波長)を捨てています。このエネルギー情報も活用するのが、エネルギー弁別型フォトンカウンティング方式です。一般的に、フォトン数を縦軸、エネルギー(keV)を横軸として表現するヒストグラムが使用されます。フルスペクトルを取得する回路は複雑になり、大面積フラットパネルでは一般的に普及していません。
下図は、MCA(マルチチャンネルアナライザ)でX線管を測定した結果を示しています。理想的には、1ピクセルごとにこれらの情報があることですが、回路規模、消費電力、発熱、データ転送量などの課題から、まだX線カメラの大面積FPDでは実現されていません。

測定方法:グローバルシャッターとローリングシャッター
グローバルシャッターは、全てのピクセルが同時に露光され、同時に画像を取得する方法です。画像全体が一度にキャプチャされるため、動きのある被写体を撮影する際にもブレが少なく、高速な撮影が可能です。
一方、ローリングシャッターは、ピクセルごとに順番に露光され、順次画像を取得する方法です。画像の取得がピクセルごとに行われるため、被写体やカメラの動きによって画像の歪みやモーションブラーが発生することがあり、低速な被写体や静止画像の撮影に適しています。
可視光のCMOSセンサは一般的にローリングシャッターを採用しており、それを技術を流用しているシンチレーション型も多く採用されています。最近では可視光カメラでもグローバルシャッターを採用している製品が販売され始めています。ANSeeN FPDは、グローバルシャッターを採用しているため、高fpsでもブレの少ない画像を得ることができます。
大面積の半導体フラットパネル検出器が難しい理由
半導体素子はシンチレーターと比べて製造コストが高く、また結晶サイズに限界があります。結晶サイズより大きい検出器は作れません。
半導体素子の下に読み出し集積回路(ROIC)が必要となり、そのROICから信号を取り出すために、ワイヤーボンディングする構造が一般的です。そのため、読み出し用のスペースが必要となり、2次元に並べることができず、横に並べたラインセンサを作ることしかできませんでした。 下図はイメージセンサを4辺から読み出している場合で、タイリングがまったくできない構造の例です。

3DLSIによる大面積化
従来のROICは片面のみ接合できるタイプであり、読み出し用スペースが必要で2次元(縦と横)に並べることができませんでした。この問題を解決するために、表と裏に接合できるLSIを自社で設計・開発し、製造しました。信号をROICの真下に引き抜くことができ、読み出し用スペースが不要な構造を実現しました。これにより大面積化が可能になりました。

デイジーチェーンとフレームレート
モジュールの真下に引き抜かれた信号は、隣にあるLSIにデータが渡されます。隣にあるLSIは渡されたデータと自分自身のデータを更に隣へ渡します。横に並べる数が増えるごとに転送速度が遅くなりますが、自由に配置できるLSIとなりました。何行何列でも配置が可能なため、FPDもラインセンサも同じLSIで実装することができます。
1モジュールの最大フレームレートは800fpsですが、横に並べるモジュール数が増えると遅くなります。例えば、横に12モジュール並べた場合、800/12=66.666となり、最大で約66fpsとなります。
ANSeeN CdTeFPDの測定モード
(1)フォトンカウンティングモード
フォトン数を出力するための最もシンプルなモードです。ノイズ除去のために、閾値をLLDで設定します。エネルギー情報を区別しないため、40keVであっても100keVであっても、同じく1カウントとして出力されます。

(2)1閾値モード
ノイズ除去のためのLLDに加え、ある一定以上のエネルギーも除去するモードがあります。LLD~ULDに該当するエネルギーの場合、フォトンカウント対象とします。

(3)2閾値モード
このモードでは、LLDからULDまでを低エネルギーカウントとし、ULDを超えるものを高エネルギーカウントとして出力します。データ転送が2倍になるため、フレームレートは他のモードと比較して半分になります。

(4)MDEIモード
他のモードがフォトン数を出力するのに対し、このモードはエネルギーの重みをつけたピクセル値の出力となります。これにより、従来の蓄積型に近い画像を得ることができます。また、蓄積型の弱点であったノイズを累積しないクリアな画像も得ることができます。
金属などを測定対象とする場合、X線を遮蔽しやすい物質からは高エネルギーの光が多く透過します。ただし、単純にフォトン数のみを考慮すると、従来の撮像方法に比べて濃淡がつきにくくなってしまいます。そのため、高エネルギーに重みをつけることで違和感の少ない画像を得ることができます。

CMOSとCdTeの比較
CdTe半導体FPDの直接変換型と、CMOSシンチレーションFPDである間接変換型の性能を比較します。CMOSはCdTeに比べて、ピクセルサイズが約1/4となっています。
| PARAMETER | CMOS | CdTe |
|---|---|---|
| SCINTILLATOR TYPE | CsI:Tl | |
| TOTAL PIXEL MATRIX(Pixels) | 2400 x 3000 | 288 x 288 (3x3FPD) |
| 1152 x 1152 (12x12FPD) | ||
| PIXEL PITCH(μm) | 49.5 | 100 |
| A/D CONVERSION(bits) | 14(A/D Conversion) | 16(photon count) |
| FRAME RATE(fps) | 10 | 266 (3x3FPD) |
| 66 (12x12FPD) | ||
| ENERGY RANGE(kV) | 40 –225 | 40-450 |
ダイナミックレンジ比較
CMOSのNormal (Full resolution) mode、Binning 2x2 modeおよびANSeeN CdTe FPDの線量率依存性(Typical Pixel)が下図になります。管電圧110kVを用いて、各FPDの最速のフレームレートで10秒間撮像を行い、積算画像を単位時間当たりのピクセル値・計数値に変換しました。

MTF(エッジ法)
エッジ法により求めたCdTe FPDの変調伝達関数(Modulation Transfer Function, MTF)は、下図の通りです。撮像時にはエックス線源としてG-311VH-Dを用いて、RQA5, RQA6, RQA7, RQA8の各場合について、FID 880mmで、タングステン板を検出面直前に置き、1 fpsで撮像した画像60枚を積算したデータから、MTFを求めました。

配管の比較(透過像)
内径40mm、厚み5.4mmの鉄配管を、拡大率2倍(FOD510mm、FID 1020mm)、10fpsで10枚撮像し、平均処理しました。検出器の違いだけでなく、225kV 0.4mAと、450kV 0.8mAで撮像し、X線管の管電圧の違いも評価しました。
X線で配管を透過する場合、下図のように外側から急に肉厚が厚くなり、内側に面する部分が最も厚みのある部位となります。そして中央付近に近づくにつれ、徐々に薄くなっていきます。

X線の特性としてエネルギーが高いほど透過力が高くなります。これは撮像対象である配管のみならず、X線検出器も透過しやすくなり検出効率の低下につながります。 以下の図のようにバックグラウンドと配管の部分を選択し、ラインプロファイルを比較します。


CdTeは高エネルギーにも反応し、225kVより450kVがより厚みがわかりやすい結果となっています。更にエネルギー補正のあるMDEIモードがより厚みが識別しやすくなります。
FPGAの比較(CT)
撮像範囲が同じになるようCMOSは部分的に切り抜いて再構成を行います。 フォーカスサイズが0.4mmのミリフォーカスX線管、拡大率2倍(FOD510mm、FID 1020mm)で撮像しました。
CMOSの10fps(144秒)225kV 0.5mA

CMOSの10fps(144秒)225kV 1.0mA

CdTeの10fps(144秒)225kV 1.0mA

CdTeの60fps(24秒)225kV 2.0mA

CdTeの60fps(24秒)225kV 1.0mA

CBCT撮像例
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